読書『東京會舘とわたし』下 新館。越路吹雪さんと東京会館のエピソード。

本の感想。

『東京會舘とわたし』下 新刊 辻村深月

昭和五十一年から平成二十七年まで、大正からの建物が建て替わってから、再度建て替えになるまでのお話です。

第7章「星と虎の夕べ」の越路吹雪さんのエピソードが印象的でした。

リアルタイムでその世代ではないのですが、越路吹雪さんの偉大さは昔から耳にしてきました。

『ラストダンスは私に』とか、私でも知っています。

あと、ワハハ本舗の梅ちゃんが歌っているやつというイメージ。

いよいよ今から歌う、というこの段階になっても、越路さんはまだ震えていた。

顔は青ざめ、細い両手でマイクを握りしめている。そのマイクもまた、ブルブル震えている。額と喉が汗で光り、目には殺気と言っていいほどの暗くて鋭い輝きが見えた。

志塚から見えるのは後ろ姿だったが、濡れそぼった羽を畳んだ小鳥のように見えていた越路さんが、ライトの下に出た瞬間、大鷲が雄々しい羽を広げるようにふわーっと腕を開いた。

その背中が、何倍にも大きくなって、広がっていく。

真剣勝負の生のステージの緊張感が文章から伝わってきました。

何度公演を重ねても、公演前に緊張で震えているというエピソード、とても意外に感じ、また親近感も覚えました。

第9章「煉瓦の壁を背に」の作家のエピソードは辻村さんの実際のエピソードと重なる部分があったように思います。

以前、辻村さんのエッセイで東京會舘関連のエピソードを読んだ記憶がありました。

「渡邉さん」

「はい」

「―いずれ、直木賞の時に帰ってきます」

言ってしまった後で、はっと唇を噛んだ。事の経緯などわからないであろう渡邉がびっくりした顔をしてこっちを見ている。

恥ずかしくて、顔を逸らす。そのまま、ロビーに続く中階段を降りようとする小椋に向けて、声が飛んだのはその時だった。

「お待ちしています」

咄嗟に振り返ってしまう。

階段の上に渡邉が立っていた。

いつも、食事の後で見送る時と同じように、恭しく礼をする。その姿を見たら、それ以上、言葉が続かなかった。

この、「直木賞の時に帰ってきます」「お待ちしています」のやりとりはたしか、実際に辻村さんが経験したエピソードだった気がします。

また、東京會舘の建て替えに伴って、直木賞の受賞の会見場所が変わる前に直木賞が受賞できた、間に合った、というエピソードも辻村さんのエッセイで拝見しました。

それは”間に合った”という気持ちだった。

小椋はあまり信心深い方ではないが、それでも、世の中には不思議な縁や巡りあわせというものがあると思っている。

自分の話したたわいない言葉を見守り、この場所の力が後押しして、小椋を會舘の、あの煉瓦の壁の前での記者会見に間に合わせてくれたように思った。

東京會舘は一度も言ったことのない場所なのですが、この小説を読んで、ぜひ行ってみたい場所になりました。

平成三十年に建て替えが終わり再オープンとのこと、楽しみにしています。

本日もお読みいただきありがとうございます。

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