本の感想。
『クローバーナイト』辻村深月
二人の子供を持つ共働き夫婦の話。
「保活」や「名門幼稚園のママ友づきあい」、「子供のお誕生日会」や「子供の成長を周りと比べて・・・」など、自分にとってタイムリーすぎる話題でちょっと読んでて苦しくなるところがありました。
冒頭の主人公の男性が、「保育園への子供のお迎えに遅れてしまう夢を見てうなされる」シーンは作者の辻村さんが実際に経験された夢の内容だったような(エッセイの方で読んだ気がします)。
子供の小学校受験のエピソードで印象的だった文↓
子どものためにもう何か始めている人がいるかもしれない、と考えると、それをやっていない自分は怠けているんじゃないかと、責められているように感じる。
それは多かれ少なかれ誰にでもある感情ではないだろうか。早期教育や習い事に関してはきっとみんな特にそうだ。
また、「子どものお誕生日会の開催が大変過ぎて名門幼稚園から転園したお母さんのエピソード」が、ほんと、読んでて苦しくて・・・実際こんな世界あるんでしょうかね。
「・・・・・・結婚式の二次会みたいですね」
思ったままの感想をつい口にすると、明日実があっさり「だから何百万もかかったりします」と答えたので絶句する。
「でも、結婚式の二次会だったら会費とりますけど、お誕生会はそうじゃないですよね?もらえるのはせいぜいその子へのプレゼントくらいで」
「それどころか、プレゼントもらっても確か、その分のお返しをお土産としてみんなに持たせるんだよね?」
志保が言って、裕はまたも「え」と息を呑む。
それじゃ、本当に引き出物つきの結婚式ではないか。
何が”普通”になるかは、誰にもわからないのだ。
他から見てどれだけ異質でおかしなことだったとしても、自分が属している社会でそれが”普通”になるのだとしたら、感覚はどんどん麻痺していくのだろう。
それはおそらく、生態系が独自の進化を遂げたガラパゴス諸島のようなものなのだ。
狭い範囲のお誕生会の島が、どんどん独自ルールで進化し、とまらなくなる。
この小説が連載されていたのがVERYという雑誌(高級住宅街に住むマダムのための雑誌?)なので、名門幼稚園エピソードや小学校受験エピソードはそういう方にとってはリアルなのかもしれません。
辻村さんというとミステリ小説の印象があるのですが、今回も各話ごとにちょっとしたミステリーと真相があって、そちらも楽しく読めました。
この本を読んで、普段棚上げしている「幼稚園に行かせるならプレのチェックをしなくちゃ」とか「いや、3歳からなら預けやすいと聞く、保育園を狙ってみるか・・・」などの考えがぐるぐるぐるぐる・・・思考の迷宮にどっぷりつかり、何もしていないのに疲労が・・・悩ましいです。